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<第50回> Updated February 22, 2010 更新日:2010年2月22日
[英和編]
PIGS ピッグス(ポルトガル、イタリア、ギリシャ、スペイン)
PIGSとは「ポルトガル(Portugal)、イタリア(Italy) 、ギリシャ(Greece)、スペイン(Spain)」の英語国名の頭文字をもじった頭字語 (acronym) の新語(注1)である。イタリアの次にアイルランド (Ireland) を入れて PIIGS (ピイッグス)と呼ばれることもある。これは欧米メデイアで造語され2008年中頃から登場したもので、英語で複数形の「豚」を意味するヒドイ差別語である。また、この頭字語は明らかにブラジル (Brazil)、ロシア (Russia)、インド (India) 、中国 (China) を指す「BRICs」(ブリックス=最後の s はmarkets の複数形の s)を模したものである(注2)。
最新報道によると、これら4か国は金融市場が混乱した2007年以降、不動産バブルが崩壊して失業率も高く、多額の財政赤字を抱えており、欧州経済の重荷になっている。その結果、今年2月4日にユーロ圏16か国の金融政策を担う欧州中央銀行のトリシェ総裁が「ユーロ圏の先行きの不確実性は強い」と発言すると(注3)、欧州の主要株価は大幅下落し、通貨のユーロも対ドル、対円で急落した。日本もPIGSと同じような状況なので、あおりを食って、さらなる不況深刻化の原因となる円高になるのだけは困る。
PIGS の邦訳語であるが、既存のメディアを色々調べた結果どこにも見つからなかったため、筆者の独創訳で恐縮だが、上記のカタカナ直訳の「ピッグス」が最適訳語となった(注4)。これは前出の「BRICs」が「ブリックス」と呼ばれていることに習った。
[用例 1]
PIGS was a derogatory acronym used mostly in 2008 by some British and North American journalists in finance and economy to refer to four countries of southern Europe: Portugal, Italy, Greece and Spain. These Eurozone countries had mixed economic performances in the few years before 2008. They were perceived as lacking fiscal discipline and often ran large current account deficits, leading to concerns about the stability of the euro currency...
(Wikipedia (online), “PIGS (economics)") (http://en.wikipedia.org/wiki/PIGS_(economics)) (seen on Feb. 10, 2010)
[用例 2]
Financial markets have coined a new term to sum up troubled eurozone states: “Pigs" Portugal, Ireland, Greece and Spain have found their bonds moving together, with Greece and its troubles a bellwether for the entire group. These countries all had a long boom based on cheap credit, which ended in a bust in which their public finances deteriorated spectacularly, raising concerns as to whether they will be able to service their debt...
(Financial Times (online), Jan. 29, 2010, “Greek burdens ensure some Pigs won't fly) (seen on Feb. 10, 2010) (注5)
| 注1) |
『日本経済新聞』2009年12月17日朝刊最終版、3面「南欧経済警戒/ユーロが下落」参照。また、『読売新聞』2010年2月6日朝刊最終版、9面「世界株安『PIIGS』が火種」も参照。残念ながら、日本で唯一の紙の新語事典『現代用語の基礎知識2010』(自由国民社刊)には同項目はない。上記[用例1][用例2]も参照されたい。 |
| 注2) |
この「ブリックス」は2001年に投資銀行(当時)のゴールドマンサックスが造語したものである。 |
| 注3) |
上記『読売新聞』記事参照。 |
| 注4) |
最新オンライン辞典の「英辞郎」(アルク社)やKOD(研究社)も「PIGS」の項目は挙げていなかった(2010年2月10日時点)。もちろん、現存の紙の英和辞典には同項目はない。 |
| 注5) |
サイトのHPはhttp://www.ft.com/であるが、記事のURLは長すぎるので割愛した。 |
[和英編]
無縁社会 a society of the unknown dead
読者の皆さん! 現在の日本には誰にも知られずに死に、遺体の引き取りもない「無縁死」が増大しており、昨年にはその数が3万2千人に上って、「無縁社会」というオドロオドロしい言葉が生まれたのをご存じだろうか。この「無縁社会」とは「日本社会を紡(つむ)いできた3つの絆(きずな)、つまり (1) 故郷との絆(地縁)、(2) 家族との絆(血縁)、(3) 会社との絆(社縁)が急速に失われ、社会との接点を無くして死亡する『無縁死』が増える社会」を指す新語である(注1)。これはNHK総合テレビが今年1月末に放送した番組で明らかとなり、「とても他人事は思えない」とか「精神的に辛い」とのコメントがオンラインの巨大掲示板「2ちゃんねる」に殺到し、個人ブログにも幅広く取り上げられて社会問題化した。しかし英訳語もないので、その適切な英訳語を模索すべく、今回取り上げた。
それにしても、NHKの調べでは「無縁死」が年間3万2千人もおり、そのうち1,000人が身元不明のままとは驚愕である。この主なる理由としては、上記に挙げた「3つの絆の喪失」や、2008年のリーマンショックによる不況の悪化による失業者や「ワーキングプア」の増大があるという。その結果「生涯未婚」と呼ばれる家庭を持てない人が増大し、「単身化」し「無縁死」が急増したという。例えば、NHKの同様の別番組で都営高砂団地で取材された藤田幹男さん(仮名、75歳)は長年トビ職であったが、離婚後ずっと単身で娘には長年会っていないという(注2)。そして、恐ろしいことに、「無縁死」した人々向けに死後の身辺整理や埋葬を専門に請け負う「特殊清掃人」や同様のNPO法人が、この2~3年急増しているという。日本は確かにヒドイ方向に向かっている。
「無縁社会」の英訳語であるが、色々調べた結果見つからなかったので、友人の英米人記者と相談して作ったのが a society of the unknown dead である(注3)。つまり、「無縁死社会」と意訳したものである。これは「無縁墓」を a tomb of the unknown dead ということからヒントを得たもの。なお、下記の訳例は a tomb of the unknown dead のものである。
[訳例]
...Description: Tomb of the Unknown Dead, Arlington, Va. In a beautiful marble sarcophagus directly in front of the Memorial Ampitheatre at Arlington, Va., in the tomb of America’s Unknown soldier body, overlooking the Capital of the Nation he died to save....
(GoAntiques.com (online), “Tomb of the Unknown Dead" (http://www.goantiques.com/detail,tomb-unknown-dead,1389185.html) (seen on Feb. 10, 2010))
| 注1) |
NHK総合テレビ2010年1月31日、午後9:00-58、「NHKスペシャル:無縁社会~無縁死3万2千人の衝撃」参照。また、NHK総合テレビ2010年1月6日午後9:00-58、「ニュースウオッチ9/単身化社会」も参照。残念ながら、日本で唯一の紙の新語事典『現代用語の基礎知識2010』(自由国民社刊)には同項目はない。 |
| 注2) |
上記NHK総合テレビ2010年1月6日の番組参照。 |
| 注3) |
アルク社のオンライン辞典「英辞郎」や研究社オンライン辞典KODは「無縁社会」の訳語を挙げていなかった(2010年2月10日時点)。市販の紙の和英辞典にはもちろん「無縁社会」の項目はない。 |
