石山宏一の新語ウォッチング

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桐蔭横浜大学客員教授 石山宏一
石山先生のプロフィール  
<第146回> Updated September 4, 2017 更新日:2017年9月4日

今月の新語ファイル

英和編 dark web ダークウェブ

dark web(発音は「ダークウェブ」)とは dark(暗い)と web (World Wide Web (www) のウェブ)の合成語で「Google などの検索エンジン等に引っかからない deep web(ディープウェブ)の一部のサイトで、犯罪性が非常に高くアングラな闇サイト」を指す新語(注1)。検索エンジンに引っかからないのは捜すクローラー (crawler) を拒否するからである。大文字にして Dark Web と表すこともある。世界に一つしかないため前に定冠詞(the)をつける。この言葉は2000年代前半にアクセスできる「Tor (トーア)」(後述)と呼ばれるアプリができてから造語され、ネットの一部に知られるようになったが、当時は普及しなかった。しかし、最近になって、その麻薬販売などの犯罪性が悪質で頻繁に事件が起こるため米国司法省が今年7月の dark web の一つである AlphaBay(アルファベイ)を欧州やアジアの当局と一緒に摘発したため、Financial Times 等の世界の主流メディアが頻繁に取り上げ、全世界に広まった(注2)。

この dark web を理解するにはかなりの知識が必要となる。上述した通り、これは一般人が Google や Yahoo などの検索エンジンでは検索できないサイトで、上記の「Tor(トーア)」と呼ばれる特殊なアプリが必要である(注3)。Tor とは The Onion Router の最初の文字を続けた略語で、このアプリを使うと dark web に行けつけるが、そのアクセスは匿名化され、追跡は非常に困難である。router(英国読みではルーター、米国読みはラウター)とはコンピューター用語でネット間を中継する装置を指し、元来はこのルーター開発に米国海軍が出資していたとされ、その軍事回線の安全保障を守るため匿名性が非常に高かった(注4)。2004年以降は民間企業もこの Torプロジェクトを応援し、今では「Tor Browser」というフリーソフトをダウンロードすれば誰でもが dark web の一端を覗くことができるが、非常に危険である(筆者はやったことがない)。

そして、最新の報道によると、米司法省が今年7月20日に dark web の一つである世界最大の AlphaBay(アルファベイ)を欧州やアジアの当局と一緒に摘発した(注5)。このサイトでは摘発時、違法薬物告知が25万件以上出ており、偽造身分証明書や銃器なども販売されており、また4万人の売り手が存在し、20万人超の顧客が利用していた。米司法省は同サイトの創設者を居住先のタイで逮捕したと公表したが、同容疑者は自殺したという。上記の通り、特殊なアプリ「Tor(トーア)」を使っているため、違法薬物を販売しても販売者や購入者の特定が難しいし、取引にはビットコイン等の仮想通貨が使われており非常に危険である。くわばらくわばらである。

dark web の邦訳語であるが、いろいろ調べた結果、英語のカタカナ読みの「ダークウェブ」を適訳語とした(注6)。直訳の「闇サイト」でも良いと思うが、インパクトがあまり無いので今回は採用しなかった。

[用例1]としては Financial Times (print) が“Dark web master thwarted by love of old-fashioned cash”と題した記事で、“Users of AlphaBay, the dark net marketplace selling everything from heroin to stolen identities , first started to suspect on the evening of July 4 that there was something awry...”として“dark web”を使っていた(注7)

[用例2]としては The Japan Times (print) が“Sinister world of the dark web is just a few clicks away”と題した記事で、“...The dark web is digital place with hidden content intended in particular for malicious activities. It exists within the so-called deep web...” として“dark web”を使用(注8)。

[用例3]としては Wikipedia (online) が“Dark web”と題した記事で、“The dark web is the World Wide Web content that exists on darknets: overlay networks which use the Internet but require specific software, configurations or authorization to access...” として“dark web”を使用していた(注9)。

注1) 記[用例1][用例2][用例3]参照。また、アスキュー(オンライン)、「普通のブラウザーではアクセスできない『ダークウェブ』とは」(http://ascii.jp/elem/000/001/186/1186201/) 参照。
注2) 記[用例1][用例2][用例3]記事参照。
注3) [用例3]記事参照(ここでは引用されていない)。一般人が Google や Yahoo などの検索エンジンで検索できるインターネットはネット全体の1割とされている。
注4) 同上。また Iot-JP.Com(オンライン)、「ディ-プウェブ (Deep Web) とダークウェブ (Dark Web)」参照(このサイトのURLは長すぎるので割愛した)。
注5) [用例1]記事参照。他に産経新聞(紙版)2017年7月22日朝刊8面、「米司法省 世界最大闇サイト摘発/アルファベイ違法薬物など販売」、読売新聞(紙版)2017年8月12日朝刊25面、「狙われるサイバー空間/ネット闇市場増殖/管理人25億円荒稼ぎ」と読売新聞(紙版)2017年7月30日朝刊7面、「サイバー防衛日本に売り込め/『世界屈指』イスラエル」参照
注6) 最新オンライン辞典の「英辞郎」(アルク)には dark web の項目はなかったが、同辞典の Weblio には同項目はあり、訳語として「ダークウェブ」を挙げ、「特別のソフトウェアでしかアクセスできない、匿名で追跡不可能なネットワークを指す」と説明していた(2017年8月30日時点)。市販の日本の紙版の英和辞典には勿論、同項目は無い。
注7) Financial Times (print), June 6, 2016, p.3, “Dark web master thwarted by love of old-fashioned cash”(有料)(https://www.ft.com/content/982a45b0-6e09-11e7-bfeb-33fe0c5b7eaa) (Seen on Aug. 30, 2017).
注8) The Japan Times (print), June 20, 2017, p.3,“Sinister world of the dark web is just a few clicks away”(オンライン版はhttps://www.japantimes.co.jp/news/2017/06/19/reference/sinister-world-dark-web-just-clicks-away/) (Seen on Aug.30, 2017).
注9) Wikipedia (online),“Dark web” (https://en.wikipedia.org/wiki/Dark_web) (Seen on Aug.30, 2017).




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